古街
漢那浪笛
黄昏時
(
たそがれとき
)
を四五分すぎたあと、
薄闇を縫ふて、紅い々々
燈
(
ひ
)
の華が、
冬咲きの仏相花のやうにちらつく。
昔の栄華を夢見る古るい街、
傾むいた軒を並べて、
底深く静まりかへる。
蔦の生へた石垣からは、
亡びの色調を帯びた虫の歌。また、
たく/″\
と流れる溝のなげかひ。
私は古るい街の巷に迷ひこんだ、
何処かへ逃げ道を見出さうとした、
古るい街は逃すまいと抱きつく。
私と亡びゆく古るい街、
その間に永い哀情が横たへ、
深かい/\闇に沈んでゆく。
底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩
」国書刊行会
1991(平成3)年6月6日第1刷
初出:「沖縄毎日新聞」
1911(明治44)年1月10日
※初出時の署名は「浪笛生」です。
※初出の新聞で作品名として扱われている「古街」を表題としました。
※表題は、底本では「南の友へ【三】」の見出しの次の行に、5字下げて2行取りの横罫の下に記載されています。
入力:坂本真一
校正:良本典代
2017年1月12日作成
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