南の国の
空は紅き笑ひを残して静かなり。
想思樹の葉のねむたげにうなだれ、
かすかなるうめきをやする。
ああ淋しみ、心をなす、植民地の
椰子の並木を縫ひて、
その時我が耳に訪づれし悲歌の哀さよ。
小暗き森の奥に、
時々もれくる
木の葉は眠りより醒めて、
あやしき
忽ち響く恐ろしき獣の声!
よろづのものは皆醒めはてぬ。
声かれて歯白ろき、獣と思へば、
吾はたゞ恐怖の為めに伏して在るのみ!
白き墓たちならぶ国!
まへには
絶えず訪づれ、
うしろには歓楽の歌きこえて、
また墓石を濡す、
哭泣の哀れも湧く。
こゝにして、悲しめる者
匂ひよき酒を椰子の実に盛り、
互に
うれしさよ!
死は遂に吾れを慰め、………
人生の
小鳥は、秋の空にさ迷ふ、
吾れは、一つの悲哀をとらへ、
小さき胸に
迷ひ、悲しみ、何の益ある、
小鳥よ来れ!手に手をとりて、
花咲き笑ふ南へさらむ。